書籍: 胎児の世界―人類の生命記憶
作者: 三木 成夫
出版社: 中央公論新社
三木成夫 著 赤ん坊が、突然、何かに怯えて泣き出したり、何かを思い出したようににっこり笑ったりする。
母の胎内で見残した夢の名残りを見ているのだという。
私たちは、かつて胎児であった・十{と}月{つき}十{とお}日{か}・のあいだ羊水にどっぷり漬かり、子宮壁に響く母の血潮のざわめき、心臓の鼓動のなかで、劇的な変身をとげたが、この変身劇は、太古の海に誕生した生命の進化の悠久の流れを再演する。
それは劫初いらいの生命記憶の再現といえるものであろう。