書籍: 人体 5億年の記憶: 解剖学者・三木成夫の世界
作者: 布施 英利
出版社: 海鳴社
私たち人間のからだは、魚であった時代の名残をたくさん抱えている。
たとえば、私たちの顔で表情をつくり、口を開いて声や言葉を発する筋肉も、魚だった時代の「えら」の筋肉が変化したものだ。
水中で生活する魚類では、顔面に味覚を感じる細胞が集中したが、上陸に伴い、ヒトでは乾燥を避けて口の中の舌でのみ味覚を味わうようになった。
東京大学の医学部の学生が特別講義を聞き終わった後、感動の余り拍手したという伝説の解剖学者、三木成夫の話術は、保母さんたちを相手にした一般講演でも笑いが絶えなかったという。
そうした絶妙な語り口に、入学したばかりの大学生だった著者も強く惹かれていく。
不世出の天才、三木成夫の「人間の見方」の全体像を、ひとつのまとまりのある本として読者に提供すること、これが本書の挑戦である。
解剖学は難しくない、人間の体や心の見方が180度変わる。